水槽を立ち上げて数日。水質を測ってみると、アンモニアや亜硝酸が検出されて悩んでいる方もいるのではないでしょうか。この記事では、アンモニアと亜硝酸がなぜ発生し、どのような経過をたどっていくのか、どうすればよいのか・・・海水水槽の“基礎的な仕組み”を整理していきます。

アンモニアと亜硝酸はどこからくるのか?
海水水槽で検出されるアンモニアや亜硝酸は、突然どこかから湧いてくるわけではありません。もともとの出どころは、とてもシンプルです。
① 魚のフンや尿
② 食べ残したエサ
③ 死んだ微生物や有機物
これらが水中で分解されると、まず「アンモニア」が発生します。アンモニアは魚にとって強い毒性を持つ物質です。そのため、水槽内ではアンモニアを分解するバクテリアが増え、別の物質へと変えていきます。そのときに生まれるのが「亜硝酸」です。つまり、
有機物
↓
アンモニア
↓
亜硝酸
という順番で発生しているのです。亜硝酸もまた魚に有害なため、さらに別のバクテリアによって分解され、最終的には「硝酸塩」へと変わります。この一連の流れを「硝化サイクル」と呼びます。立ち上げ初期にアンモニアや亜硝酸が検出されるのは、このサイクルがまだ完成していないからです。
※硝化サイクルの詳しい仕組みは別記事(水質管理の基礎知識2)で解説しています
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まず知っておきたい:バクテリア発生の流れ
海水水槽ではこういう流れが起きています。
① 魚のフン・エサ
↓
② アンモニア発生
↓
③ アンモニアを分解する菌(バクテリア)が増える
↓
④ 亜硝酸に変わる
↓
⑤ 亜硝酸を分解する菌(バクテリア)が増える
↓
⑥ 硝酸塩になる
最初にアンモニアが発生して、少し遅れて亜硝酸が発生します。バクテリアの発生がうまく行くと、アンモニアが最初に消失して、少し遅れて亜硝酸が消失します。
アンモニア検出と対処法
アンモニア濃度の検査は「出てるか」「出てないか」がわかればよいのでわたしは精密なものは使用しません。テトラの簡易なテストスティックで事足りています。0ppmならOK、0ppmでなければNGと判断します。
立ち上げ初期にアンモニア濃度NGと判定された場合は、生体の様子を見て20%~最大50%の水替えを行って、生体の命を守りつつバクテリアの立ち上がりを待ちます。
<Point>
アンモニアを検出したからと言って全換水を行うといつまでもアンモニアを分解するバクテリアが育ちません。生体の命を守りつつ、アンモニアを水替えで無理やりゼロにしない程度にて立ち上がりを待ちます。
<Point>
水槽立ち上げ時はアンモニア耐性が高い生体(スターティングフィッシュ、パイロットフィッシュ)を導入します。(立ち上げ時ににデリケートな生体を導入するとこの時期にあっさりと落ちてしまいます)
適正なフィルターを備え、適正量の生体を収容している場合、2~3週間前後でアンモニアは検出しなくなってくる場合が多いでしょう。
おすすめのスターティングフィッシュ
1・デバスズメダイ
水質の許容範囲が広い。性格がおとなしいため後々の混泳に困ることが少ない。はじめから乾燥飼料を食べる。美しい。

2・ハタタテハゼ
水質の許容範囲が広い。はじめから乾燥飼料を食べる。美しい。弱点は臆病でメンタルが弱いこと。

おすすめしないスターティングフィッシュ
初心者が選びがちなおすすめできないスターティングフィッシュとしては・・・
コバルトスズメ、ルリスズメなど
性格がきつく、その後に収容する魚と激しいバトルは不可避です。水槽は立ち上がっても他の魚を入れることが難しくなってしまいます。デバスズメ以外のスズメダイはスターティングフィッシュとしてはおすすめしません。
アンモニアが1か月以上消失しない原因として考えられること

最も単純な要因としては、フィルターの能力が足りていないことが第一に考えられます。例えば、淡水魚向けのフィルターを使用していたり、ろ材がマットのみであったり、活性炭などの吸着剤のみである場合などが挙げられます。また、非力なプロテインスキマーのみで立ち上げようとしている場合もいつまでもアンモニアは消失しません。
次いで、ろ材の取り扱い方を間違っている事も考えられます。例えば、ろ材を定期的に水槽水で洗っていたり・・・。ろ材を水道水や真水で洗浄するとせっかく増えたバクテリアは全て死滅してしまいます。そうすると、また最初からバクテリアを増やし・・・増えた頃にまた洗浄と、バクテリアが増えないループに陥ってしまいます。ろ材の洗浄は必ず海水で行います。
他には、ライブロックのバクテリアをあてにして、フィルターを設置していないか非力なフィルターで立ち上げている場合。ライブロックの表面にはバクテリアが付着しており、「ライブロックは自然の恵み!最高ろ過器だ!!」と主張する向きもありますが、ライブロック自身のろ過能力はあまり高くありません。フィルターの補助になったり、他の有用な効果はたくさんありますが、ライブロックをろ過のメインに据えるのは無理があります。
アンモニアが消失しない場合は重大見直し箇所があるはずです。
亜硝酸の検出と対処
アンモニアが処理され始めると今度は亜硝酸が出てきます。亜硝酸はできるだけ低い濃度まで測定したいところです。アンモニアのときの様な簡易テスター・試験紙では不十分です。おすすめテスターはレッドシーのマリンテストキット硝酸塩/亜硝酸塩です。
レッドシーの本品は亜硝酸塩と硝酸塩どちらも測定することができます。テスターを2種用意する必要がなくなるので大変ありがたいテスターです。亜硝酸の定量下限は0.05ppmと低い値まで測定できます。
上記記事でテスターについて、より詳細に記述しているので併せてご覧ください。
亜硝酸が検出したら、生体の様子を見て20%~最大50%の水替えを行って、生体の命を守りつつバクテリアの立ち上がりを待ちます。アンモニアの時と同じですね。ただし、アンモニアの消失よりも時間がかかると思います。
亜硝酸がずっと消失しない(0.1ppm以上検出される)原因

基本的にはアンモニアと共通ですが、第一にフィルター能力を疑います。次いで、生体の収容数が過多でないか。餌を与えすぎていないか。食べ残しが多く発生していないか。水を汚しやすい生エサの投与過多ではないか。ライブロックで何らかの生物が死滅していないか等、亜硝酸も多岐にわたる要チェック項目があります。

アンモニアと亜硝酸がともに消失したら立ち上げ完了
アンモニアも亜硝酸も検出されなくなった。この状態が数日間安定して続けば、水槽内の硝化サイクルはひとまず完成したと考えてよいでしょう。つまり、
有機物
↓
アンモニア
↓
亜硝酸
↓
硝酸塩
という流れを処理できるバクテリアが、水槽内に定着した状態です。ここでようやく「生体を安全に受け入れられる土台」が整います。ただし注意したいのは、立ち上げ完了=完成形ではないということです。水槽はこれから、
・生体の数
・給餌量
・水換え頻度
・ろ過能力
によってバランスが変化していきます。焦らず、少しずつ生体を増やしながら、水槽の処理能力を育てていきましょう。
番外編:スターティングフィッシュを用いない立ち上げ方1
通常の立ち上げではスターティングフィッシュを用いて立ち上げを行う場合が多いですが、スターティングフィッシュを用いない立ち上げの方法もあります。
一つ目の方法は非常に単純で簡単な方法です。生体の居ないセットしたての水槽に「スターティングフィッシュの代わりに生エサなどを投入し水を汚す」方法です。
スターティングフィッシュの役割はアンモニアを発生させることにあります。わざわざ生体でこれを行うのではなく、生エサなどの水質汚染源を人為的に投入してアンモニアを発生させるのです。
生エサは煮沸したアサリや、魚の切り身、冷凍飼料など添加物のない物を少量投入しましょう。投入後2~3日経過したらアンモニアと亜硝酸を測定し、それぞれ発生している事を確認しましょう。なお、乾燥飼料は汚染力が低いためできれば生エサか冷凍飼料をおすすめします。

1か月程経過して、汚染源を入れてもアンモニアと亜硝酸が高濃度にならないようになったら立ち上げ完了です。このタイミングで全換水を行いましょう。これで生体の導入準備が整いました。
番外編:スターティングフィッシュを用いない立ち上げ方2
もう一つの方法は、立ち上がっている水槽からろ過材をもらってくる方法です。複数の水槽を持っている人や、ツテがある場合この方法が有効です。

多くの場合、水槽に必要な全量のろ材をもらう事は難しいので、一部のろ材をもらいそこから立ち上げをスタートすることとなります。道の途中で合流するイメージですね。
注意事項としては、そのろ材の履歴。過去に投薬したことがある水槽のろ材ではないか確認してから使用しましょう。ろ材が薬品を吸着している可能性がある場合避けた方が無難です。
市販のバクテリア剤の必要性は?
わたしの環境では効果を実感したことはありませんでした。使用方法や環境、条件によっては効果があるのかもしれませんが・・・。なお、わたしは現在市販のバクテリア剤は何も使用していません。水槽を立ち上げる時でもバクテリア剤は使用しません。
まとめ:焦らないことが最大のコツ
アンモニアが出る。次に亜硝酸が出る。バクテリアが育ち、やがて両方が消える。数値が出ると不安になりますが、多くの場合は失敗ではなく、水槽が立ち上がりへ向かっている途中段階にすぎません。大切なのは、
・適正なろ過能力
・適正な生体数
そして「焦らないこと」です。
立ち上げ期は、バクテリアを育てる時間。魚を飼う前に、水を作るという感覚が重要です。じっくりと水を作り、安定した環境で美しい海を楽しんでいきましょう。


