給餌の技術【餌を漠然と与えていませんか?】

飼育技術

海水魚への給餌

魚に餌を与える時間は海水魚を飼育していて最も楽しいひと時ですね。楽しいと同時に、魚にとっては栄養を摂取する重要な時間であり、キーパーが餌の食べ方に目を光らせて魚の体調を観察するべき重要な時間でもあります。

給餌はとても奥が深いです。1週間や2週間であれば適当な餌をパパッと与えてキープすることは容易でしょう。しかし、年単位で健康にイキイキとキープするためには単に食べさせれば良いだけではなく、すべての飼育魚に偏りなく適量・適切な栄養素を与えなければなりません。厄介なことに海水魚はキーパーが用意した餌をはじめからは食べない種が多く餌に慣らす餌付けの作業が必要になります。餌を与えるにあたって考慮すべき重要な要素を下記に記載します。

  • 魚種
  • 導入からの日数
  • 本来の食性(肉食、草食、ポリプ食など)
  • 体の大きさ、口の大きさ
  • 他の同居魚との関係
  • 餌を食べる速度
  • 体調
  • 太り具合、痩せ具合
  • 目つき(イキイキとしているか)
  • 日頃の動作(岩をつついてるなど)
  • 水槽内の水流や水質
  • 自分が所持している餌の種類

そうです!上から4つ以外は個体を観察しないと分からない事なのです。多数の可変要素が絡み合っているのでその状況に合わせた給餌を求められます。

給餌は数少ない毎日の手作業!

飼育において数少ない魚との直接的な対話のひと時と言えます。水槽やろ過槽等の設備達はセットすれば基本的にはセットしたとおりに魚をキープしてくれます。しかし、給餌は人の手を介在するのです。それも淡々と行うのではなく魚の様子を見ながら日々状況に応じた与え方をしなければなりません。わたしは飼育をはじめて間もない頃はなんとなく餌を選んで、パラパラとラフに与えて満足していました。しかし、それでは長期間健康に色艶良く飼育をすることは困難でした。給餌は初心者とベテランで最も大きな差が付くポイントです。

いきなり上手く餌を与えるのは難しいかもしれませんが、毎日魚をよく観察し、徐々に給餌技術を磨きましょう。

魚種ごとのセオリー

とはいえ、やはり魚種ごとに大まかな特徴があります。この魚はこんな食性、あの魚はあんな食性。知識として基本の食性を頭に入れておきましょう。

<スズメダイの仲間(クマノミを含む)>
カクレクマノミ 
なんでも食べます。ガツガツ食べます。スズメダイを飼育しているときの給餌キーポイントはスズメダイが餌を食べすぎて他の魚に餌が回らなくなっていないかのチェックです。
<ヤッコ(キンチャクダイ)の仲間>
イナズマヤッコ 
おおむね雑食性ながらも、わりと草食傾向が強いように思われます。健康維持のために必ず草食性の餌(海藻70など)を一定量与えましょう。小型ヤッコは口が小さく大きい粒は食べられない事もあるので粒の小さいものを用意しましょう。海藻70は良い餌なのですが、Sサイズでも意外と粒が大きいので時にはすり潰して与えます。総じてメンタルが弱く、慣れない環境や、圧の強い魚がいると拒食になりやすいです。餌付けは隔離スペースで確実に行えると安心です。ヤッコは種によって特性の幅が広いのでこれはあくまでも全体的な傾向です。
<雑食性のチョウチョウウオ>
セグロチョウチョウウオ 
環境と体調が良ければ冷凍餌であればはじめから口にしてくれる事が多いです。慣れれば乾燥餌をパクパクと水面に来て食べるようになるでしょう。わりと肉食傾向が強いようで、調子が良いとディスカスハンバーグを喜んで食べていました。チョウチョウウオは自然界でヒラヒラ泳ぎながら常時餌を摂取して暮らしているため一度にたくさん食べることができません。しかも薄い体のため痩せやすいです。できるだけこまめに餌を与えることがポイントです。チョウチョウウオが餌にガッついてる光景は非常に見ごたえがあります、この種の中で難しい子はチェルモンとフエヤッコです。チェルモンは冷凍餌は食べますが乾燥餌はまず食べません。フエヤッコは慣れればなんでも食べますが食が細く時間をかけてじわじわ栄養不足になるため年単位での飼育には気合を入れた給餌が必要です。両種ともとても魅力的な種なのですが・・・。
<ポリプ食のチョウチョウウオ>
魅力的な種が多いのですが、腕に覚えがなければ飼育は難しいと考えてください。通常の冷凍餌もはじめは食べてくれないことが多いです。アサリを練ってペースト状にしたものを殻に塗って齧らせることから始めます。慣れても乾燥餌は期待しにくい種です。ポリプ食チョウチョウウオ専用水槽で飼育しましょう。ハナグロチョウ、飼いたいなぁ~
<ハギの仲間>
ナミダクロハギ 
乾燥飼料を種類を問わずなんでも食べますが草食です。コケを食べている姿がよく見られます。肉食やプランクトン系の餌ばかり与えていると体を悪くします。泳ぎが速く他の魚に餌がいきわたるか気を配りましょう。入手しやすいハギの仲間のうちツノダシは難しいです。メンタルが弱く、いったんへこむと立ち直りにくいので、丁寧に丁寧に取り扱われて来たツノダシを、丁寧に飼育することが必要です。
<ハナダイ、ハナゴイ>
キンギョハナダイ 
プランクトン食性ですが、種によって難易度がまったく異なります。飼育しやすい種はキンギョハナダイなどです。一方でパープルクイーンなどは安価に売られていて美しいので気軽に手を出しそうになりますが難しいです。飼いやすい種と難しい種は見た目では区別できないので衝動買いせずにしっかり調べてから狙い撃ちで購入することをおすすめします。複数飼育が基本です。
<ハゼ>
ハタタテハゼ 
1・ハタタテハゼに代表される遊泳性のハゼは肉食またはプランクトン食ですが、人工飼料を含めなんでも食べます。ただしハゼ全般に言えるのですが警戒心が強く、隠れっぱなしでほとんど餌を食べに来ないことが少なくありません。強い魚やビュンビュン泳ぐ魚と混泳すると餌不足になるので意図的にしっかりと餌を与えてください。大きな水槽よりも小さな水槽での飼育のほうが向いているように思います。
2・共生ハゼもなんでも食べますが、餌を取りに行くよりも来るのを待つ傾向があります。やはり食への執着が薄めに感じます。こちらからしっかりと給餌したいところです。
3・ベントス性のハゼは砂の中の餌を食べる特性があるため、ついつい掃除屋さんだと誤解を受けることがあります。汚い砂には弱いので砂をきれいにしておくことがポイントです。他の魚のおこぼれで生活してもらおうとすると餌不足です。やはりこちらからしっかりと給餌したいところです。
<ニセスズメ、バスレット>
ロイヤルグラマ 
いずれも肉食またはプランクトン食で人工飼料も問題なく食べます。経験上、草食性の餌は食べませんでしたが、これは摂取する必要がないのだと思われます。餌で困ることは少ない種かと思います。
<ギンポ>
ヤエヤマギンポ 
ヤエヤマギンポに代表されるギンポは草食性です。はじめは人工飼料は食べませんが、ある程度コケが生える水槽ならばコケだけで足りていました。意識して餌付けをしなくても徐々に他の魚に与えている餌の味を覚えて一緒にバクバク食べるようになります。餌付くとコケを食べなくなるという説も見かけますが、わたしの経験上はそのようなことはなく餌もコケもバンバン食べていました。
<フグ>
肉食です。泳ぎも摂餌もゆっくりで、他の魚と混泳していると餌を横取りされがちです。そのため、フグだけでの飼育が望まれます。

餌の分類

乾燥飼料:フレークや粒餌などの乾燥状態の餌です。値段が安く、長期保存でき、栄養素が優れています。しかしながら、自然界に乾燥餌は存在しないため初めから食べてくれるとは限りません。乾燥餌を覚えさせ、上手に食べてもらうための作業を餌付けといいます。なお、乾燥状態でもクリルのように素材そのままを乾燥させた餌は一般に乾燥餌に分類せず単にクリルと呼ばれることが多いです。代表的な乾燥飼料はキョーリンのメガバイトシリーズなどです。

冷凍飼料:主にプランクトンや甲殻類などをそのまま冷凍した餌です。乾燥餌よりも自然の食物に近く嗜好性が高いです。餌付け難易度高めの魚初期飼料としても使われます。乾燥餌よりもソフトな口当たりのため、口が小さい魚もチュルっと食べることができたりします。飼育魚が乾燥餌に餌付いているか否かを問わず、1種類は持っておきたいところです。代表的なものは冷凍ブラインシュリンプです。

生餌:アサリ、エビ、魚介類、海藻等の自然食品です。中でもアサリは餌付けが難しい魚の初期飼料として最も定番の餌です。魚介類の切り身は大型肉食魚の餌として用いられることが多いです。アサリなどは一旦冷凍してあっても生餌に分類されています。やわらかい海藻は草食魚の栄養補給に適しています。

活き餌:生きているブラインシュリンプやエビ、プランクトン、メダカ、金魚など生きている餌です。ブラインシュリンプを除きストックに手間がかかることが欠点です。どうしても活きている餌しか食べない生体に与えます。

餌の与え方

乾燥餌であれば水槽上部からパラパラ投入する方法が最もオーソドックな与え方です。この方法では、水面で餌を食べられる魚が有利です。粒餌ならば少し中層・下層にるいる魚にも届きます。海水魚は自然界においてまず水面に浮いてる餌を食べる経験がありません。水面で食べない魚にも届く給餌法を心掛けたいところです。

わたしがよく行う給餌方法はパラパラ方式ではなく、乾燥餌を一旦少量の海水に浸して、ピペットで与える方法です。

簡単に狙ったゾーンに餌を持っていくことができます。ピペットは何種類か持っておくと何かと重宝するでしょう。

もう1点重要なことは、魚の口に合った大きさの餌を与えることです。大きな餌は小型魚は食べられません。反対に小さな餌は大型魚でも食べられます。やや小さめサイズの餌を選ぶことがおすすめです。

私見・雑談 餌メーカーについて

現在、海水魚用の餌はやはりキョーリン製品が強い印象です。メガバイトシリーズが出たときにはその嗜好性の高さに感心したものです。栄養別にレッドとグリーンの2種をラインナップし、海藻を強化した海藻70も傑作です。冷凍餌も殺菌消毒され安心して使用できるうえ、ビタミンを添加して素材の栄養以上の餌に仕上げられているようです。相当研究して作られていることがわかります。

少し前までは、フレークフードはオメガワンという海外の製品が非常に良くてずっと愛用していたのですが、最近日本に輸入されなくなってしまいました。そのため今はフレークフードもキョーリン製品を使用しています。うーん、キョーリンやっぱり強い。日本のメーカーとして引き続き頑張ってほしいですね。

基本は観察!

冒頭でも述べましたが、給餌の基本は観察です。給餌技術はトライ&エラーの繰り返しで向上します。少し意識を高めてより良い給餌を行いましょう。

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