誰も教えてくれない人工海水の正しい作り方【塩を漠然と溶かしていませんか?】

水質管理

人工海水の作り方には正しい方法がある!

マリンアクアリウムの基本中の基本、人工海水はみなさんどうやって作っていますか?聞いてみると、人工海水の素の溶かし方は千差万別人それぞれのようです。ここでは、良い例、悪い例、わたしの例を交えて人工海水の溶かし方を考えていきましょう。

水道水かRO水か

人工海水の溶媒に水道水を使うか、RO水を用意するか・・・。これは飼育生体と水道水の水質によります。ミドリイシなどのハードコーラルを飼育する場合で、水道水の硝酸塩濃度が5ppmを超える場合はRO水の方が良いでしょう。

ちなみに自宅の水道水の硝酸塩濃度は2~3ppmなのでミドリイシを飼育していた時代を含め、RO水は使っていません。ただし、ミドリイシ飼育水の硝酸塩濃度がほぼ0ppmだったので、水替えによって硝酸塩を補充してしまうような状態ではありました。そのため、大量換水はできない不自由さがありました。やはりミドリイシ飼育にはRO水があった方がよいですね。ただ、浄水器はなかなか敷居が高いんですよね・・・。本体価格もさることながら、水回りの設置が大変で・・・。今私がRO浄水器を選ぶとしたら下記の商品でしょう。非常にコンパクトで、精製能力が高く、設置しやすいです。LEDで有名なボルクスジャパンから発売されています。ほんの一昔前まではこんな選択肢はありませんでした。

わたしは現在、水道水に人工海水を溶かして使っていますがサンゴを再開する際にはRO浄水器を導入したいですね。

バケツに真水を張る

さて、溶媒の話は一旦置いておいて、さっそくわたしの人工海水の作り方に入りましょう。まずはバケツに真水を張ります。真冬でも給湯器を通さずにCOLDに蛇口をひねって水道水を取ります。温水はどういう状態の経路、配管、設備を通っているか不確かなのでNGです。給湯器の一部に錆があったりすると厄介です。そのため無難なCOLDの水を取ります。

たくさん作る時はインスタントオーシャン(昔のパッケージ)のカラバケツに水を。

少量作る時(といっても17~18Lはあります)はコーラルプロソルトのカラバケツに水を。
水を張ったらできればそのまま12時間くらい放置します。

水を張ったバケツに、水中ポンプ、ヒータを入れます。写真にはないのですが、水温計も入れます。安全のためヒーターにはサーモスタットを接続しておきましょう。設定温度に達したら通電を止めてくれます。わたしはずぼらしてヒーターをダイレクトにコンセントにつないでしまっていますが、非常に悪い(危険な)例です。なお、夏場は反対に水を冷やす必要があります。夏場は保冷剤を何個か準備しておくのが最も簡単でしょう。

保冷材の中身が出ることはないとは思いますが、万一があると困るので私はビニール袋に入れて使用しています。

人工海水の素を測り入れる

いつも使うバケツに対してだいたい何ccで目標の比重になるか覚えておくとよいでしょう。計量カップは100円ショップの安いもので事足ります。わたしは2回に分けて人工海水を測り入れます。

水滴の付いていない計量カップを用意し、人工海水の容器を開けます。人工海水は超湿気に弱いので、空気に触れる時間を最短で済ませるため開けたら迅速に測り取り、即、容器のフタを閉めます。

水温が上がりきる前に1回目の人工海水の素を投入します。だいたい20℃位で投入します。夏場であれば加温しないのですぐに投入です。水中ポンプで水が回転しているところに、さらさらさら~と塊にならないように計量カップを振りながら投入です。投入したら、底に溜まった人工海水の素をポンプで散らすように混ぜます。

1回目の人工海水が概ね溶解したら、2回目も同じように投入します。2回目に人工海水を取る時に計量カップに水滴が付いていないか注意しましょう。同様に人工海水が底に溜まらないように注意して完全に溶かします。塩素中和剤を含まない人工海水の素の場合、塩素中和剤も忘れずに適量入れます。

水温が飼育水と同じになり比重調整後、水が透明になってから1~2時間程度ポンプで攪拌したら完成です。透明度高く綺麗に溶解していますね。人工海水の素が痛むと若干の白濁が残ったりします。

悪い例
「人工海水の容器を開けたまま塩を溶かす作業をする」人工海水が湿気てしまします。開けたら即測り取って即密閉しましょう。
「水滴が付いた計量カップで人工海水を測り取る」人工海水が湿気てしまします。取る毎に完全に乾いている計量カップを使いましょう。
「手で頑張ってまぜまぜする」悪くはないのですが、まぜ具合にムラが出やすいです。それに大変です。1個水中ポンプを用意しておく方が楽だと思います。

非常に悪い例
「バケツに人工海水の素を先に入れてあとから水を注ぎ入れる」これはやってしまう人がいるかもしれませんが、一瞬でも高濃度の海水になると人工海水同士が反応して不溶性の物質ができてしまいます。塩に水を入れるのではなく、水に塩を入れる事を厳守しましょう。
「お湯に溶かして後から冷たい水を注ぎ入れる」2重に悪い例です。人工海水はお湯に溶かす設計ではありません。冷たい方がよく溶ける成分もあり、お湯に入れてしまうとなおさら不溶性の物質ができてしまいます。

まさかとは思う悪い例
「小袋で10L用だから、真水10Lに溶かせば比重は正しいだろう。だから測らなくてよかろう」まさかとは思いますが・・・。溶かした水の比重はきちんと測りましょう。

Q&A
・エアーレーションはしないのか?→わたしはしません。水中ポンプの攪拌で充分だと考えています。ただし、人工海水の銘柄によってはエアーレーションを推奨しているものもありますのでその場合は行った方がよいでしょう。特に指定がなければわたしはエアーレーションはなしです。
・溶解後一晩ポンプでまぜた方が良いと聞いたけど?→わたしは溶解後1~2時間程度攪拌したらすぐに使用します(一晩おいてないです)。

水温合わせについて

新しい海水の水温は飼育水-±0.0~+0.5℃の範囲に合わせます。±1.0℃では水温差が大きすぎます。水温計はデジタル表示のものを使用しましょう。

わたしは上記ニチドウのマルチ水温計Hを使用しています。これ以外買う気が起きないくらい安くて良いです。水槽に引っ掛けない場合はマルチ水温計CTも良いでしょう。アナログ式の水温計で少数点1桁の水温を読み取るのは至難の業です。水温計はデジタルです!ただし、例外的に1本だけアナログ式の水温計を持っています。

エヴァリスのきっちり計れる水温計Lです。これは国内で生産された精度の高い水温計です。具体的な使用方法は、半年に一回くらいデジタル水温計の値ときっちり水温計の値を比べるのです。きっちり水温計を正として、デジタル水温計が正しい値であるか比較して故障を見つけるためです。なお、マルチ水温計Hの正確性も非常に優秀で今まできっちり水温計と異なる数値を示したことはありません。マルチ水温計Hは2つ持っているのですが、いつも2つのマルチ水温計Hの値ときっちり水温計の値はぴったり一致しています。素晴らしい精度です。

わたしの人工海水の保管方法

開封した人工海水は空気に触れるとどんどん空中の水分を吸って質が落ちます。開封後は密閉して空気に触れないように保存します。

袋に入った人工海水は、インスタントオーシャンのカラ容器(225L旧パッケージ)に入れています。それだけでは密閉度が足りないので・・・

蓋と容器本体のつなぎ目をセロテープで1週ぐるっとテーピングしています。これで、数か月は湿気知らずで使用できています。

また、わたしはワムシの培養水やブラインシュリンプの孵化用水に頻繁に少量の人工海水を作ります。そのたびにこの蓋を開けていると大変なので小分け容器にも入れています。

焼き海苔の容器が今のところちょうどいいサイズです。これにもセロテープを巻いています。

まとめ 人工海水の素を正しく使おう

途中、水温計持論に少々脱線しましたが、人工海水の素を溶かすという単純な作業も意外と深かったですね。溶媒の準備、溶解の順序、人工海水の素の保管、水温調節、比重調整、この5つがキーワードです。

たとえ高級な人工海水を使っても、たとえRO水を使っても・・・人工海水を正しく溶かせないと全く価値を発揮できません。ちょっとした違いで非常にもったいない結果になります。逆に正しく人工海水を使いこなせていれば、廉価品でもよっぽどでない限りスムーズに飼育できたりします。質素な機材でベテランがすごい水槽を維持している・・・なんでだ?どうやってるんだ?!という疑問は人工海水に限らず、意外にも小さな差の積み重ねだったりもします。

今回は誰も教えてくれない人工海水の作り方について書きました。いつものことながらめっちゃ私見なので参考としてみてくだされば幸いです~~~

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