飼育技術~機材選定編~【水槽サイズの決定 水槽が全ての土台!!】

飼育技術
当たり前ですがマリンアクアリウムを始めるにあたっては水槽が必要です。では、どんな水槽を選びますしょうか?水槽選びは飼育の方向性に最も大きな影響を与えるといっても過言ではありません。自分の飼育スタイルに合った水槽を選定し、最高のマリンタンクを作りましょう。

水槽の大きさ

まず考えるべきは水槽の大きさです。何を飼育するのか、水槽をどこに置くのか、どの程度メンテナンスに手間をかけられるのか、どのくらい予算があるのか、あらゆる要素を総合的に勘案して水槽の大きさを決めましょう。幅の小さい順に分類してみましょう。

ボトルアクアリウム

水量2L~大きくても7L程度までのボトルで飼育するスタイルです。子供サイズのカクレクマノミ飼育にほぼ特化されています。水量が少ないハンデを逆手にとって綿密に練られた商品もあります。各種消耗品(ろ材や海水、餌など)は専用に計算された機材を用いて、それらを使うことで絶妙なバランスをとった設計がなされているため飼育のポイントは、必ず専用品を使用することです。そして、説明書の通りにメンテナンスを実施することです。水量が少ないということは水質が悪くなりやすく、変動しやすいというデメリットがあります。しかし、それを逆手に取ると全量の海水交換が簡単にできるという事です。水替えや、化学的な水質浄化で何とかなりうる水量なのです。週一の全換水と補助ろ過でなんとかなるバランスで飼育します。

もう1つのポイントは魚種です。対象魚がカクレクマノミにほぼ限定されています。それは、カクレクマノミはあまり広い範囲を泳ぎ回らないためです。我が家のクマノミも観察しているとイソギンチャクの手が届くエリアからほぼ離れません。また、水質の変化や悪化にも強く、餌もなんでも食べるという飼育のしやすさから、カクレクマノミならばという事で飼育できるようになっています。

<ボトルアクアリウムで飼育可能な生体>
◎クマノミ(小)
○海藻
△小さなエビ、貝(ボトルの大きさによる)

カクレクマノミをボトルで飼育する・・・。マリンアクアリウム経験者にとっては賛否あると思います。一昔前のブームの時に簡易的なボトルレベルで無造作に飼育された数多くのクマノミの命が失われて社会問題になりました。時は経ち、現代のボトルアクアリウムの一部には理論と工夫に基づいた商品もみられるようになってきました。私見を述べると、ボトルでの飼育開始も”有り”と考えます。なぜなら、誰でも簡単に楽しめるような工夫された商品が、マリンアクアリウムの裾野を広げてくれる可能性を感じるためです。「海水魚は大掛かりで高額な機材がないと飼えない、飼育は大変だ!」というイメージを払拭して誰もが楽しめる趣味になる可能性を秘めています。

ボトルアクアリウムから始める皆様は、半年~1年くらいうまく飼育が出来たら是非通常水槽にステップアップしましょう!!

繰り返しになりますが飼育のポイントは、なんといっても説明書の記述の通りに飼育することです。当ブログの飼育理論と異なる点もあると思いますがボトルに限っては特殊環境ゆえ、説明書記述に従って飼育しましょう。もう1点加えると、水温を一定に保つことが大切です。ヒーターを入れられない場合は、冬場は必要に応じて空調やパネルヒーターを使用して保温しましょう。

30cmキューブ水槽

ここから水槽と呼べるサイズになってきます。最小水槽サイズは幅*奥行*高さ=30cm*30cm*30cmの30cmキューブ水槽あたりとなります。水量は約27L程度(注:水槽めいっぱい水を張った時の理論値です。実際は10%程少ない水量になります。以下の解説においても同様です)。小水量のため水質悪化と変動に注意が必要ですが、このサイズだと大幅水替えが容易でメンテナンスのしやすいというメリットがあります。大きな魚は買えませんが、小型魚や飼育しやすいサンゴ、イソギンチャクなどにも挑戦出来る大きさです。全く初めての飼育であれば、できればもう少し水量が多い方が水質変動が緩やかで良いのですが、30cmキューブからのスタートもお勧めできます。また、ベテランのサブ水槽として色々楽しめる大きさでもあります。水量の少ないからこそ、技術力、腕の見せ所も多いのです。30cmキューブを見事に仕上げ、維持する匠の技は見る人が見れば伝わってきます。

また、小さい生体の飼育にも適します。小型ハゼなどは大きな水槽で飼育するとどこに行ったのかわからなくなりますが、30cmキューブならすぐに見つかります。ライブロックから出現する生体も観察しやすいです。水を張った総重量は30kg程度~なので置き場にもそこまで神経質にならなくても済みますね。

<30cmキューブ水槽で飼育可能な生体(一例)>
◎スズメダイ(クマノミを含む)
◎ハゼ
◎他小型魚
△チョウチョウウオ
△小型ヤッコ
△ハギ
×大型ヤッコ

◎ライブロック
◎エビ、貝
〇ソフトコーラル
〇イソギンチャク
〇海藻
△飼いやすいハードコーラル
▲ミドリイシ

チョウチョウウオ、小型ヤッコは大きさ的に収容できても病気、餌付け、水質要求の点からやや難易度が高いです。ハギはビュンビュン泳ぐ子が多いのでもうワンランク大きい水槽が望ましいです。ミドリイシを30cmキューブで維持出来たら一目置かれます。

30cmでもオーバーフローな安心セットです。ぴったりと無駄のない設計で、どんな部屋にもスマートに設置できそうですね。

ブラックシリコンを使用した単品水槽はこの値段とは思えない高級感です。

小型水槽はコストがかからない他に、メンテナンスが容易で飼育が負担にならない(=結果的に長続きして飼育がうまくいく)、高級機材(人工海水や照明など)を使用しても少量または小型のものなので負担が少ない。複数個設置して同居できない生体を別々に飼育できる。など楽しみも多いです。

45cm*30cm*30cm水槽

30cmキューブ水槽を横に+15cm伸ばした、45cm*30cm*30cm水槽。水量約40L。30cmキューブより横に+15cmの余裕が生まれます。45cmとしては最も多く市販されているサイズです。飼育可能業種は30cmキューブに準じますが、このあたりからチョウチョウウオと小型ヤッコの飼育が現実味を帯びてくるラインです。

このサイズは意外と気の利いたセット商品が少ないため、水槽を単体で買って他の器具も単体で揃えるという選択肢もあります。

本品は地震対策仕様となっており、水槽にフランジ(上部の枠)が付いています。フレームレスガラス水槽に枠が付いている品は非常に珍しいうえ、揺れによる水漏れを大幅に抑制できることが期待で来るためこの水槽は超おすすめです。さらに、不人気だったのかアウトレット価格になっており、もうすぐ絶版の予感がします。いい品なのに・・・、知られていない隠れ名作です。お早めに・・・。

45cmキューブ水槽

45cm版のキューブ、45cm*45cm*45cm水槽。水量約90L。30cmキューブから幅、奥行、高さ全て+15cmした水槽です。一気に水量が増えて90L。45キューブはセンチ数の印象以上に堂々とした水槽です。見ごたえばっちりで、存在感と高級感が漂います。海水魚用の上等な市販品も多く出ているサイズです。大きすぎず、小さくもない、バランスに優れた水槽規模です。大型魚を除き一般種はたいてい収容できます。コンセプトを定めて45cmキューブ水槽を仕上げたいですね。

レッドシー社のシステム水槽は専門メーカーによる、考え抜かれた設計で使いやすく、仕上げも美しい見事な逸品です。水槽台もセットのため何も悩むことがありません。あとは楽しむだけです。

60cm*30cm*36cm水槽

淡水魚における中型水槽です。マリンアクアリウムの世界ではまだ小型の部類です。水量約65L。実は45cmキューブより水量が少ないです。他に60cm*30cm*30cmなどもあります。大型魚以外なら一般種はたいてい収容可能です。60cm規格水槽と呼ばれ量産されており、安価です。

セット品のオーバーフロー水槽は安価ながら安心して使用できます。循環ポンプ付きのセットもあるようですが、ポンプは別途好みのものを選んだ方が良いでしょう。

さすが規格サイズなだけあって水槽単品も安く、買いやすいですね。周辺機器の選定も楽しいこと間違いなし!!

こちらはアクリル水槽。軽くて割れないのでガラス水槽より高いですが選ぶ価値があります。フランジもついており、災害に強いです。

60cm*45cm*45cm水槽

45cmキューブ水槽を横に+15cm伸ばした、60cm*45cm*45cm水槽。水量約120L。45キューブにさらに+15cmの余裕。あまり量産されていないため割高な印象もあります。下位の45cmキューブか、上位の90cm規格水槽を選ぶ人が多いためと思われます。幅がコンパクトながら、しっかりと飼育ができるので私はこのサイズの水槽も好きです。

買いやすい値段ですが過不足のないセットですね。自分でいろいろカスタムするベースに最適だと思います。

マーフィードのセットは昔から人気です。重厚な高級感があってインテリア性も抜群です。見るからに高級なつくりで、この価格にも納得です。

単品ならこちら。買いやすい値段ながら、信頼して使用できる水槽です。

単品のアクリル水槽ならこちら。やはりガラス製よりも高価ですが、この大きさになると、アクリルの軽さがとてもありがたく感じられます。

90cm*45cm*45cm水槽

水量約180L。一昔前はこのサイズがマリンアクアリウムの中型水槽とされていました。90cm規格水槽と呼ばれ、量産され安価に入手しやすいです。このあたりから、アクリル製が主流になってきます。あらゆる設備が本格化し始める、ガッツリマリンアクアリウムワールドの入り口ですね。大型ヤッコが飼育できるようになってきます。重量があるため床の強度を含めた置き場に気を配る必要があります。この規模からは、ほぼオーバーフローろ過が採用されることになり、上下合わせた水量は250L近くになります。水質の安定感もあり、色々な生体を飼育しやすい大きさです。また、一般人が維持管理するならこのサイズが程よい大きさです。これ以上のサイズはマニアと呼ばれる世界に突入ですね。

アクロシリーズはコストパフォーマンスが非常に高いガラスオーバーフロー水槽。え?この値段でいいんですかレベルのコスパ。非常にすっきりとした見た目ので、余計なものがセットされていないため、玄人のベース水槽にも適します。

マーフィードの水槽は重厚感がありどっしりとしたデザインの水槽台が特徴。水槽の四隅をしっかりガードして、安全性も抜群の一本。

90cm規格より一回り大きいレッドシーのシステムオーバーフロー水槽、REEFERは同社のノウハウの結晶。手に入れた瞬間に飼育レベル爆上げが約束されます。徹底的に飼育の事を考えた設計に感服するしかありません。水槽の仕上げも美しい、ハイエンド水槽です。

アクリル水槽は既製品があまり売られておらず、カスタムメイドでオーダーするか、水槽単品、水槽台単品、ろ過槽単品をそれぞれチョイスすることになります。選ぶ楽しみ、作る楽しみがあるアクリル水槽です。また、90cmガラス水槽の搬出入や移動はビッグイベントですが、アクリル水槽なら楽々です。この小回りは助かります。

単品アクリル水槽に組み合わせる水槽台も色々ありますが、信頼できるメーカー品でも買いやすい価格です。

組み合わせるろ過槽(サンプ)の大きさは好みで選びます。本水槽が90cmならろ過槽はそれよりも一回り小さいサイズを選ぶのが一般的です。ろ過槽内でろ材スペースが分かれていると交互に掃除ができて、バクテリア(水質)が安定します。

クーラーをキャビネット内に収めたい場合やなどには小さ目を選ぶ手もあります。ろ過槽よりもスキマー重視でサンプを小さくして他の機材スペースを優先する選択肢もあります。オーバーフロー水槽は自由度の高さが最大の魅力です。

120cm*45cm*45cm水槽

水量約250L。オーバーフローの場合ゆうに300Lを超えます。このサイズのマリンアクアリウム水槽を置くだけで家が一気に豪邸の様相を呈してきます。多くのマリンアクアリストの憧れサイズでもあります。

とにかく豪華な水槽です。人の目を引くこと間違いなし。こんな水槽を手に入れたならば是非SNSで公開して多くの愛好家たちの目を楽しませてください。

アクリル水槽は単品で選んでいきます。

大型水槽のため総重量もかなりのものです。信頼できる機材を選び、床の強度にも気を配って設置して下さい。120cmガラス水槽の搬入は一人では困難です。業者の力も借りましょう。

180cm水槽以上

大型水槽に分類されます。遊泳性のサメ飼育などが可能になるビッグサイズの水槽です。床の強度を含め専門業者に納入してもらう必要があります。奥行きも高さも60cm以上になるためメンテナンスも相応の技術が必要です。水深が深いと下に手が届きにくく、細かい作業が難しいのです。そのため、小さな生体を飼うことが少ないサイズとなります。大型魚を優雅に飼育できます。

ガラス水槽がほぼなくなり、アクリル水槽一択に近くなってきます。ガラス水槽では重すぎて一般人では取り扱えず、水量が多すぎて普通のガラス水槽の作りでは耐えないためです。既製品はほぼなく、特注サイズとなります。なお、レッドシーMax Sシリーズに同等サイズがありますが日本で売っているのでしょうか?サメなどこのサイズの水槽でないと飼えない生体を飼う時のための水槽ですね。

他、変則サイズの水槽

デザイン性に優れた円柱型水槽、前面曲げガラス水槽、左右にろ過槽を備えた水槽など変則サイズの水槽もあります。好みに合わせて選定するとよいでしょう。変則水槽でも「水量がどのくらいか」を押さえれば飼育のイメージができるはずです。

水槽サイズの選定まとめ

水槽サイズは飼育できる生体のみならず、その後のメンテナンスやランニングコストにも大きく影響します。希望をかなえつつ、長期にわたって維持管理できる水槽規模を選定することが成功への第一歩です。どのサイズもメリットとデメリットがあります。初心者の方で、迷われる場合は私の推しサイズをひとこと理由を添えて下記に記載します。参考にされてください。

1・45cmキューブ水槽:バランスが良くデザインが良い

2・60cm*45cm*45cm水槽:45cmキューブの上位版

3・60cm*30cm*36cm水槽:入手しやすく手軽

3・90cm*45cm*45cm水槽:安定していて飼育で困ることが少ない

4・30cmキューブ水槽:小回りが利いて楽しい

どの水槽を始めるにしても楽しい事間違いなし!悩む時間も本当に楽しいひと時です。ぜひたくさん悩んでたくさん夢を膨らませて理想の水槽を手に入れてください。

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