海水水槽を立ち上げ、アンモニアや亜硝酸が落ち着いてくると次に発生してくるのが「硝酸塩(NO3)」です。魚に対してはアンモニアや亜硝酸ほどの毒性はありませんが、対策を行わないと水槽内で蓄積していき、魚を不調にしてしまいます。サンゴやイソギンチャクにとっては猛毒のため対策が必要です。また、コケの栄養となり美観を損ねる原因にもなってしまいます。
本稿では海水水槽における硝酸塩の基本的な考え方と対処法について整理していきます。
硝酸塩(NO3)とは?
硝酸塩は水槽内で発生したアンモニアや亜硝酸が、バクテリアによって分解された“最終産物”です。水槽内では、有機物→アンモニア→亜硝酸→硝酸塩(NO3) という流れが起きています。つまり、硝酸塩は「水槽内で生物ろ過が働いた結果として発生する物質」と言えます。蓄積していく性質があるため、硝酸塩をどう管理するかが重要になります。

なお、アンモニアと亜硝酸については下記の記事で解説しています。立ち上げ期の水質変化について知りたい方は、こちらも参考にしてください。
海水魚の飼育における硝酸塩の目安
非常にザックリな目安として、海水魚の飼育において10ppm未満であればGOOD。~20ppmであれば概ねOK。~50ppmであれば中程度。~100ppmであれば要改善。それ以上であれば至急要改善です。ただし、ヤッコの仲間は硝酸塩にデリケートなため上記の半分くらいの濃度を目安にします。魚種によって差がありますのでこの数値はあくまでも目安です。

サンゴ・イソギンチャクの飼育における硝酸塩の目安
大雑把に分類すると、ミドリイシ等特に敏感なサンゴは1ppm程度であればGOOD。~3ppmであればギリギリOK。~5ppmであれば要改善。それ以上は至急要改善です。

ソフトコーラル等敏感でないサンゴやイソギンチャクにおいては5ppm未満であればGOOD、~10ppmであればOK、~20ppmであれば要改善。それ以上は危険信号です。
種類によって差がありますのでこの数値はあくまでも目安です。
硝酸塩(NO3)の測定方法
今回はレッドシーの硝酸塩テスターでの測定方法を紹介します。


瓶、試薬用スプーン、試薬A、B、Cと比色チャートが付属しています。

バイアル便に海水5mlを測りとります。

試薬Aを5滴滴下して攪拌します。

次に試薬Bを付属のスプーン1杯加え攪拌します。試薬Bは若干溶解しにくいのでよく攪拌します。

試薬Bが溶解したら、試薬Cを付属スプーンに1杯加えて攪拌します。約9分間待ったら付属の比色チャートと見比べて硝酸塩濃度を決定します。

約5ppmでした。

このレッドシーのテスターは亜硝酸を測定することも可能です。その場合は、海水16ml、試薬A1滴、試薬C1杯で測定します。
硝酸塩をコントロールする方法
①水替え
最も基本的な方法です。水替えによって硝酸塩を外に排出するイメージです。水替えの際に作る人工海水の作り方は下記の記事も参考にしてください。

②給餌の質・量を見直す
生体が食べきれる量のエサを与えたり、食べ残しが出ない方法で餌を与えます。上手な給餌方法については下記の記事を参考にしてください。
併せて、水槽の状態によって水を汚しにくい乾燥飼料と、嗜好性が高が水を汚しやすい冷凍飼料を使い分けます。
③フィルター・ろ材の管理
汚れが蓄積したろ材や底砂は、硝酸塩発生源になります。水替えしても思うように硝酸塩濃度が下がらない場合はこれらの清掃が行き届いていない可能性が高いです。
底砂の清掃はプロホースを用いて水替えと同時に汚れを抜き出すことができます。
ろ材は定期的に水槽から抜き出した海水で洗浄します。ろ材を水道水などで洗浄するとせっかく増えたバクテリアが死滅してしまいます。必ず水槽の海水(水替え時に抜き出した海水)で洗浄します。

④プロテインスキマーの使用
有機物が微生物に分解される前に除去することで硝酸塩の発生を抑制します。

⑤脱窒・嫌気ろ過
脱窒といって、通性嫌気性細菌により硝酸塩を還元し窒素ガス(N2)として大気に放出する方法があります。

通性嫌気性細菌の活動には有機物が必要となります。この有機物の事を”炭素源”と呼び、メタノールなどの液体や、生分解ブラスチックなどの個体を炭素源として水槽に供給することで、通性嫌気性細菌を活性化して脱窒を促進します。
まとめ
硝酸塩のコントロールは、海水水槽を長期維持していくうえで重要なテーマです。硝酸塩はじわじわと蓄積し、コケの増加、無脊椎動物の不調、水質の不安定化など、水槽全体へ慢性的な不調をきたします。
硝酸塩はゼロにするのではなく、飼育している生体に応じて適正な管理値を設定して、安定させる意識を持ちましょう。そのためには定期的な硝酸塩濃度の測定が欠かせません。
魚、サンゴ、バクテリア、コケ、測定値・・・バランスを見ながら水槽全体を整えていく硝酸塩管理もまた “水を育てる” 海水水槽の楽しさのひとつです。







