
体が強く、最も飼育しやすい海水魚の一種に数えられるクマノミの仲間。カクレクマノミやペルクラクラウンにも弱点があります。それはトリコディナ病です。トリコディナ病は、発見と対処が遅れるとあっという間に死に至ることがある危険な病気です。
白点病も怖いけど、実はこの“膜”状の病気(トリコディナ病)がクマノミではもっと恐ろしいかもしれません。知らなかったらこの病気を見逃して「ある日突然死んでしまった」という結末を迎えることも多く、知名度以上に警戒すべき病気でもあります。
トリコディナ病になる前にトリコディナ病の知識を身につけて、この病気に直面したら即座に対処できるように準備をしておきましょう。前編ではトリコディナ病の基礎知識編をお届けします。
重要注意事項:本稿の記事は、あくまでもわたし自身の経験や調査に基づいてまとめたものであり、内容が正しいことを保証するものではありません。治療において使用している薬剤は、本来の用途とは異なる方法で使用している場合があります。生体の状態、水槽環境、個体差により効果や反応が大きく異なります。最終的な判断は必ず読者ご自身の責任でお願いいたします。また、本稿を参考にしたことによって生じたあらゆる事象について、一切の責任を負いかねます。
トリコディナ病とは
主症状:体表が薄い膜を貼ったように白く曇る、元気がなくあまり泳ぎ回らずに一か所でじっとしている
原因:トリコディナ原虫の寄生
予後:治療しないとすぐに死に至ることがある しかし適切な治療を施すと治る可能性が高い
罹りやすい魚種:クマノミの仲間
トリコディナ病の恐ろしさ
1:進行速度が速い。魚の体力が落ちているとものすごいスピードで進行して死に至ります。
2:慣れていないと見つけにくい。白点病は白い点が体表にバッチリ見えるため、誰もがすぐに「病気だ!」と気づけます。一方でトリコディナ病は体表が薄い膜を貼ったように白く曇るため、比較的進行しないと気付きにくいことが危険性を増長しています。
トリコディナ病の典型的な症状と白点病との区別方法
トリコディナ病と白点病では治療方法が全く異なるため、区別することが非常に重要です。見極めポイントはトリコディナは点ではなく体表に現れる薄い膜です。スポットが出る白点病とここが決定的に違います。

クマノミの不調サイン(トリコディナに限らず)
海水魚の体調を判定する方法は魚種によって様々ですが、クマノミの体調を最も簡単に判断する方法は背びれの立ち上がりです。

赤丸の背びれを常にたたんでいる時は不調の場合が多いです。トリコディナ病に罹患している時も背びれをたたんでじっとしています。背びれをたたんでいても必ずしもトリコディナ病ではありませんが、体表が膜を貼ったようになっていたらトリコディナ病の疑いが高く、進行する前に治療を行いましょう。
好調のサイン
次の写真はトリコディナ病完治後のクマノミです。背びれの立ち上がりの違いに大注目です。

顔色も全然良いですね。身体全体がシャキッとしています。
トリコディナ病の判定は正面から見る
トリコディナ病が疑われた時、魚を横から見てもなかなか気づきにくいです。真正面から魚を観察するとよりわかりやすいです。

真正面から見ると、白いもやもやが膜状になっています。

もやもやの形が歪で「白点=均一に白くて丸いスポット」ではありません。この症状はトリコディナ病です。症状の見極めを誤ると一気に進行してしまいます!
トリコディナ病の治療方法
淡水浴で治療します。淡水浴で使用する淡水には「グリーンFゴールド顆粒」という薬を規定量の半量を溶解します。
トリコディナ病治療の必須グッズ一覧
- プラケースやバケツなどの容器
- エアポンプ&エアストーン
- アクアセイフなど塩素中和剤
- グリーンFゴールド顆粒
- 電子天秤(グリーンFゴールド顆粒を計るため)
- 隔離ボックス
事前に準備しておけば、万が一の時も安心です。
プラケースまたはバケツ(=なんでもOK)
魚が多少暴れても飛び出さない高さのものを用意してください。日頃使っているバケツがあればそれでもOKです。クマノミの淡水浴であれば、淡水5L程で事足りるので10Lくらいのバケツかケースがちょうどよいでしょう。もっと小さくても差し支えはありませんが、グリーンFゴールド顆粒の測り取りが非常に少量のグラム数となり難しくなります。淡水5L、容器10Lを目安にしてください。
エアポンプ&エアストーン(=なんでもOK)
既にお持ちの場合も多いでしょう。クラウンファクトリーでは、安価、静か、吐出量調整可能、丈夫、とすべてを満たしている水作のSSPP-3Sを使っています。
塩素中和剤
アクアセイフやパーフェクトウォーターを使いたくなりますが、グリーンFゴールド顆粒との干渉が否定できません。コントラコロラインのような単一機能の中和剤を使用しましょう。
グリーンFゴールド顆粒
そっくりな名前の薬がいくつもあるので間違えないようにしてください。特にグリーンFゴールドリキッドと間違いやすいのでご注意ください。
なお、本品はメーカーの記述では「海水魚には使用しないこと」と書かれています。自己責任で使用します。ショップでも本品を溶解した黄色い水をよ~く見かけるほど頻繁に利用されていますが、メーカー的にはNGとしている点を認識の上使用しています。
電子天秤
0.1グラム未満の微量のグリーンFゴールド顆粒を秤量する必要があります。正確にこの重さを秤量する場合は高額な天秤が必要になりますが、この薬は多少誤差があっても差し支えないので下記の様な安価な電子天秤で事足ります。
電子天秤の選び方ポイントはできるだけ少量を計れるものを選ぶことです。
隔離ボックス
1日数分の淡水浴を何日か繰り返すことになります。毎日魚を捕まえるのはストレスを与えるうえに、大変なので治療期間中は隔離ボックスで過ごしてもらいます。

定番の隔離ボックスといえば、AZOOのビッグフィッシュハウスです。ちょっと大きめの余裕があるサイズながら安価で、大型魚以外であればこのボックスで隔離可能です。また、真ん中にセパレーターを備え、相性の悪い魚を一度に隔離することもできます。とにかく便利なボックスです。
次回、後編は実際の治療ドキュメントをお届けします
次回、後編ではクラウンファクトリーでの治療の経過を公開します!治療前/治療後の比較を交えた治療ドキュメントをお届けします。
最後にしつこいですが、当サイトの情報はあくまでもわたし個人の経験に基づいた私見です。くれぐれも自己責任にて治療を行ってください。注意事項を再掲しますm(_ _)m
重要注意事項:本稿の記事は、あくまでもわたし自身の経験や調査に基づいてまとめたものであり、内容が正しいことを保証するものではありません。治療において使用している薬剤は、本来の用途とは異なる方法で使用している場合があります。生体の状態、水槽環境、個体差により効果や反応が大きく異なります。最終的な判断は必ず読者ご自身の責任でお願いいたします。また、本稿を参考にしたことによって生じたあらゆる事象について、一切の責任を負いかねます。
