【誰も教えてくれない】海水魚の白点病3~銅(キュプラミン)を使う白点病治療【特効薬】

病気

海水魚飼育をはじめた方が、必ずぶつかる大きな壁——それが「白点病」です。白点病を治せるようにならないと初心者の域を超えることはできません。しかしながらパート2でも記述したように巷には効果が不確かな療法で溢れています。海水魚の白点病パート3では白点病を確実に治せる薬を学んでおきましょう。

もしも、まだパート1(白点虫の基礎知識)とパート2(治療法NG編)を読んでいなければこれら2つの記事を先に是非ご覧ください。

白点病を治せる薬

いきなり本稿の結論ですが、白点病を確実に治せる薬は系の薬です。多くのマリンアクアリストが敬遠する銅こそが唯一「白点病を治せる」と感じられる薬でした。

ではなぜ多くのマリンアクアリストが銅を敬遠するのか?それは2つの理由があります。
1◆適正な銅濃度を保つ必要がある(濃度が高すぎると魚が死に、低すぎると白点病が治らない)
2◆銅は無脊椎動物(サンゴ、イソギンチャク、エビなど)が居る水槽には使えない

理由1は銅テスターを用いて適切に濃度管理さえできれば容易にクリアできますが、理由2の無脊椎動物への毒性は如何ともしがたく、無脊椎動物が同居する水槽には銅を投与できません

重要注意事項:銅は適切に使えば海水魚の白点病の特効薬です。しかし、無脊椎動物に銅は猛毒のため無脊椎動物が居る水槽に銅を投与してはいけません。サンゴ、イソギンチャク、エビ、カニ、貝、海藻・・・魚以外の生体に対しては全て銅はNGと考えてください。

私を含め、昨今では海水魚と一緒に無脊椎動物を飼育することが多くなっています。では銅じゃダメじゃん・・・という声も聞こえてきそうです。確かに本水槽で銅治療ができないかもしれませんが、隔離水槽を用意するなどの工夫で銅治療が可能です。

飼育生体や水槽設備に応じて様々な銅治療の形態がありますが、まずは治療薬について下記に記述していきたいと思います。

白点病の特効薬=商品名「キュプラミン」

白点病の特効薬の商品名はキュプラミン(seachem)です。 

大昔は白点病の治療に用いる銅は「硫酸銅(五水和物)」を用いていました。この硫酸銅ですが一般人が入手することはほぼ不可能な代物で入手自体が困難だったのですが、このキュプラミン(有機銅)の登場で一気に銅治療が容易になりました。今はキュプラミンが通販ですぐに入手できます。100mlで3000円少々といったところでしょうか。一般的なホビーユースでは100mlもあれば一生分の白点病治療薬に十分な量です。現にわたしも20年近く前に購入したキュプラミンが現役です。海水魚を始めたら一本持っておくべき治療薬と考えています。

キュプラミンの特徴は、硫酸銅と比べて安全性が高く、低濃度でも効果を得られ、バクテリアに影響を与えず、成分が残留蓄積しにくい事がうたわれており、これらを確かに実感できます。(安全性が硫酸銅よりは高いとはいえ高濃度での薬浴や、無脊椎動物への使用は厳禁です)

使用に際しては1mlというような微量のキュプラミンを計り取る必要があります。精密である必要はありませんが、程よい容量のピペットを1本持っていると便利です。メスピペットになじみがない場合は駒込ピペットが使いやすいでしょう。正確ではありませんが、大幅に誤差が出ることもないでしょう。

なお、測り取ったキュプラミンは一気に添加してはいけません。一旦少量の海水に混ぜて、点滴の様にぽたぽたとゆっくりと滴下します。キュプラミンの使用方法詳細は別の記事に詳細に記載します。

<昔話・硫酸銅時代の苦労>
硫酸銅が唯一の特効薬だった時代は海水魚の白点病=「死」に近いものがありました。まず、一般人が硫酸銅を容易に入手できません。印鑑を持って特別な薬局に行けば稀に入手できる・・・との事でしたが当時はインターネットも普及しておらずそんな薬局がどこにあるかわかりません。手あたり次第、薬局で「硫酸銅って買えますか?」なんて聞いても怪しいことこの上なし。当時は地下鉄サリン事件のような有害物テロなどもあり、社会的に化学物質に対して敏感になっていました。そんな中、硫酸銅を求めて来る人物は完全に不審者です。

しかも、当時わたしは中学生くらい。硫酸銅を探している中学生・・・ヤバいですね。

万難を排してどうにか硫酸銅を入手しても新たな苦労が立ちはだかります。粉末の硫酸銅(五水和物)をグラム単位で正確に秤量し、溶解しなければなりません。グラム単位で秤量できるハカリが一般家庭にはありません。料理用アナログ式のザックリしたハカリがあるのみで現代のようにデジタル式のスケールが安価に売られいません。1kg用のアナログのハカリで1gを計る。無理難題です。下記の様なデジタルスケールが格安に売られているのは本当にありがたい限りです。

そして、計算自体が難しい。硫酸銅(五水和物)で水槽の銅濃度が0.3~0.5ppmになるように水溶液を作成するのですがそもそもppmって・・・という所にもぶつかります。計算を誤ればおしまいです。

最後に、銅濃度を測定するテスターも良いものはなかったと記憶しています。水槽の銅濃度を計ってみると分かるのですが、投入された銅は吸着されたり分解されたり、理論値通りの濃度にはなりません。測りながらの添加が欠かせないのですが、そのためのテスターがなく、入れすぎて銅中毒を起こしたり、少なすぎて治らなかったり、非常に難しいものがありました。

そんな中、登場したキュプラミンは「〇〇Lの海水にに〇ml添加」と圧倒的な使いやすさで、高い安全性、高い効果。添加量が分かりやすくmlで示されているので革命的なものでした。併せて使いやすい銅テスターも発売され、白点病との闘いはこのキュプラミンと銅テスターで終止符が打たれたのです。

銅テスターは絶対に必要

キュプラミンで銅治療をする際、初回は40Lの海水に対し1mlのキュプラミンを投与し、以降毎日銅濃度を測定して0.5ppmが維持される様に保つことが標準的な使用方法です。銅は添加すると、ろ材、砂、海水等に吸着・分解され水中に残留する濃度は環境によって異なるため、必ず1日1回はテスターで測りながら目標濃度を保つ必要があります。

現在、銅テスターはセラのCu Testがおすすめです。

治療後は必要に応じて銅の吸着剤を使用する

キュプラミンはろ材などに残留しにくい治療薬ですが、敏感な生体を飼育する予定がある場合は完全に銅を除去しておく必要があります。

シーケムで専用の吸着材(キュプリソーブ)が用意されています。硫酸銅時代は一回硫酸銅を使ったらその水槽では以降無脊椎動物は飼育できないとまで言われたものですが、キュプラミンはキュプリソーブで完全に除去できます。

銅(キュプラミン)による白点病治療は必修科目です

巷にあふれる治療法は一旦忘れて、最初は確実に治る銅(キュプラミン)による治療をマスターしましょう。効果が定かではない謎療法を試行しているうちに白点病は進行し、魚の体力はどんどん低下していきます。私は魚の体力が残っているうちにサッサと銅で治療します。改めて下記にポイントを3つ示します。

・白点病の特効薬は銅(キュプラミン) 他の療法は頼りないのが現状
・銅は無脊椎動物には完全NG 使い方に注意(次回の記事で紹介します)
・銅濃度をテスターで測定しながら使う

上級者は銅ではない療法を独自に使いこなすこともありますがそれは銅を熟知したうえで、あえて水槽や生体の状態を見極めてギリギリの線(高度な経験による技術)で治していると認識しましょう。我々はまずは「銅」です。

次回以降の記事では、銅(キュプラミン)を用いた実際の治療について紹介していきたいと思います。

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