【水槽用クーラー?エアコン?】夏の水温管理

ぺルクラクラウン

海水魚飼育でぶつかる壁、夏場の水温管理。水温を下げるための設備は、水温を上げる設備(ヒーター)よりも大掛かりになるためみなさん苦労するところです。今日はわたしの水槽の水温管理を紹介します。

水槽の熱源

夏は外気温が高く何もしなくても水温が上がります。それに加えて、水槽内には熱源があり、室温よりも水温の方が高くなりがちです。水槽内外の不必要な熱源はできるだけ少なくしたいところです(が、不可欠なものも多くありますね)。

◆照明:一昔前はメタルハライドランプが多用され、熱量も大きかったです。近年はLEDが普及してメタハラよりは大分発熱が抑えられていますが、点灯中のLEDに触れるとやっぱり熱くなっています。
◆ポンプ:ポンプも立派な熱源です。水中ポンプにウェーブポンプ・・・水槽にたたくさんポンプがあるとそれだけ発熱しています。不必要に大きなポンプの使用や、多すぎるウェーブポンプの設置は水温面では不利に働きます。
◆殺菌灯:殺菌灯を付けている人もいると思います。これもバッチリ水温を上げてしまいます。殺菌灯にはポンプも必要です。二重で水温UPです。
◆日光:水槽内の熱源ではありませんが、日光が水槽に当たる環境はかなり過酷な条件です。上級者が「やっぱ日光に当てるとサンゴの活きが違うぜ!」といって日光を上手く使っている事もありますが、それは職人技です。一般人は水槽に日光を当てない方が良いです。日光は水槽の劣化も早めます。そして日光はコントロールできないので安定感にも欠きます。

それでは水温抑制の手段を見ていきましょう。

水温を抑制する手段

1・室内エアコン
室内エアコンを24時間稼働して部屋ごと水温を管理するダイナミックな方法です!部屋に水槽が何本もあり、一個一個に冷却対策を施していられないマニアが採る方法ですね。水槽専用部屋という事もあるでしょう。そういう人はSNSで崇められますので是非水槽部屋をアップしましょう。

2・水槽用クーラー
普通のマリンアクアリストが採る方法です。初心者にとっては水槽用クーラー導入はなかなか踏み切れない所ですね。値段、大きさ、騒音、排熱、など色々と悩むポイントがありそうです。ですが、導入してしまえば夏場の水温問題からは解放されます。

3・水槽用ファン&逆サーモ
いわゆる扇風機です。うまく使えば馬鹿に出来ない冷却力があったりします。

4・保冷剤
緊急用の手法です。異常に暑い日に他の冷却方法の手助けとして一時的に使用されたりします。

1・室内エアコン

説明不要、人間用のエアコンです。適度な温度設定であれば人間も快適になりますが、低めに管理したい場合、寒くても水槽優先となります。室内エアコンは他の水温対策の補助としても非常に有効です。上手に活用していきましょう。

2・水槽用クーラー

サンゴやイソギンチャクがいる場合は、よほど涼しい地域でない限り揃えたい機材です。小型水槽向けのペルチェ式と、通常のチラー式があります。水槽用クーラーは特別な理由がなければ実績のあるゼンスイ社のものを勧めます。サポート体制も整っており、クーラーはゼンスイかな、とわたしは思います。

~30Lまでの小型水槽であればTEGARU2は非常にコンパクトで設置しやすいでしょう。弱点は意外にファンの音が大きく排熱もあることです。小さい分一生懸命稼働しているように感じます。消費電力も対応水量を考慮すると低いとは言えません。また、水温調整のステップが大きく小数点刻みで水温を設定することはできません。ですが、30L程度までの水量で28℃前後まで冷えれば良い需要にはこの手軽さは助かります。室温32℃と仮定して、そこから-5℃程度が本機の能力の限度といったところでしょう。

また、出たばかりの新製品である外掛け式クーラー、カケルも画期的な製品です。循環ポンプが不要で引っ掛けるだけの手軽さです。実物を見ると写真のイメージよりは大きいですが、クーラーとしては非常に小さいです。弱点はフランジ付きの水槽に引っ掛けられない事です。ですが、通常の30cmガラス水槽などであればもうこれでしょう!レベルの新製品です。水温設定も小数点刻みで設定でき、水温アラート搭載とよく考えられています。

ペルチェ式クーラー使用時のポイントは水槽の断熱をすることです。断熱性が高いという事は、冷やした海水温が上昇しにくいという事です。パワーの弱いペルチェ式クーラーの負荷軽減に大きく役立ちます。災害対策でも紹介した下記の様な断熱材を併用しましょう。

チラー式のクーラは一般家庭ではZCシリーズをおすすめします。ポイントは静音性です。ZCシリーズは能力の割に静かで低消費電力です。コスパ重視ならZRシリーズをおすすめします。

60cm水槽や60~70L程の水量であればZC-100αを検討します。以降ZC-200α、ZC-500α、ZC-700α、ZC-1000α、ZC-1300αと容量に応じた豊富なラインナップです。なお、ZCにはサーモスタット代わりになってヒーターもコントロール出来る機能があり、ヒーターコンセントを備えていますが、この機能は使用しないことをお勧めします。ポンプトラブルで循環が停止した時にヒーターが付きっぱなしになったり、サーモ機能そのものが故障して異常な水温になる事故をたまに聞きます(特に前モデル)。クーラーでヒーターを制御する事が印象としていまいちしっくりこないためか、セッティング時のヒューマンエラーも誘発しやすいです。時々このクーラーで加温もできると勘違いされる人もいますが、単にサーモスタットとして動作するだけです。加温は別途用意した専用のサーモスタットとヒーターを用いて行いましょう。ZCが備えているヒーターコンセントは使用しないことをわたしはおすすめします

ZRシリーズも捨てがたい性能を持っています。特に大容量になるとZCシリーズと比べて圧倒的にコスパが高いです。

ゼンスイのホームページにも詳しく記載されていますが、「水量+水槽で使用するすべての電気機器のワット数」を足し合わせたリットル数を目安に機種を選定しましょう。

3・水槽用ファン

水槽用ファンはうまく使えば意外な冷却力を発揮するものもあります。非常に安価で消費電力も少ないことが最大のメリットでしょうか。ファンの効果的な使用方法は、水流のある場所に送風することです。選定のポイントはできるだけ羽が大きいものを選ぶことです。羽が大きいと音が静かでも風量を確保できます。小さいファンがキュイーーーーーンと高い音で高回転している音は煩わしいです。

ファンのデメリットはなんといっても水の蒸発が多くなる事です。海水水槽にとって水の蒸発は比重の変化(濃くなる)を意味します。こまめな足し水が欠かせません。・・・という事は、足し水を水道水で行っていたならばこまめに水道水中の望まざる物質も足されるという事です。硝酸塩やケイ酸塩など蒸発しない物質の濃度が徐々に高まることを意味しています。これは特にサンゴ飼育では敬遠される要素です。ファンの本当の弱点は足し水の面倒くささではなくここにあります。ですが、魚の飼育などそこまで不純物を厳しく追及しない場合はファンが役に立ちます。他に湿度によって冷却力が低下することも弱点として挙げられます。気化熱を利用して水温を下げるため、多湿環境下では下げがいまいちになったり、安定感に欠きます。湿度の観点からは室内エアコンとの相性が良いのでエアコンの補助としての活躍も見込めます。

また、意外な冷却力のため延々と稼働していると思わぬ水温低下を招くこともあります。ファンを使う時は必ず逆サーモを使って必要以上に冷えないようにしましょう。逆サーモがあれば冷え過ぎの心配がないので大きめのファンを選べます。ファンに逆サーモは必須です。オートサーモ付きファンではなく、単一機能のファンと、温度設定可変式の逆サーモを選びましょう。

ファンの冷却力侮ってはいけません必ず逆サーモを接続して使用しましょう。

わたしの水温設定(原則)

海水魚しかいない水槽→29℃前後(夏季は最大30℃まで許容):水槽用ファンで管理
イソギンチャクのいる水槽→28℃前後:水槽用クーラーで管理
サンゴがいる水槽→26~27℃前後:水槽用クーラーで管理

魚種などによって異なりますが通年で概ね上記のような水温にセットしています。

我が家のクーラー

我が家では現在イソギンチャクがいるクマノミ水槽にてZC-100αを使用しています。

下記の様なU字(J字?)パイプでホース接続を行っています。

安価なパイプホルダーと組み合わせて使用します。

ポンプはエーハイムコンパクトオン600 高低差があるので本当はもう少し大きいポンプを付けたいところです。クーラーの配管は無頓着だとごっちゃっとして美観を損ねやすいので、すっきりキレイに配管したいですね。この水槽はオーバーフローではないのでサンプに配管を隠すこともできません。配管はキレイかつ安全確実に!グリーンが有名なエーハイムのホースですがマリンアクアリウムでは黒のホースがしっくりくるかなと思います。

クーラーは寝室に置いていますが、何とかぎりぎり耐えられる程度の騒音でしょうか(個人差大)。音は結構するのですが、音質があまり耳障りにならないように工夫されているように思います。

水温は一定であることが重要

今回は夏の水温管理について記述しました。このページの最後にもうひとつ重要な事をお伝えします。

水温は一定であることが重要です。悪い例は、夜間25℃の時間もあれば、昼間30℃の時間もある・・・このように短時間で大きな水温変動があると生体は必ず体調を崩します。とにかく水温の「変動」に弱いのです。人間だって寒暖の差が堪えるように、変温動物である水槽の生体はその何十倍も寒暖差が堪えているはずです。この悪い例の場合いっそのことずっと30℃の方がマシかもしれません。クーラーがあれば最もよいのですが、価格、置き場、騒音等のため全てのキーパーがクーラーを用意できるとは限りません。そんな時は「変動」を最小限にする観点も意識して水温管理に取り組むとより良い結果を得られると思います。

クーラーを所持していないと仮定して夜間25℃・昼間30℃の悪い例であれば、わたしなら夜間28℃・昼間はファンで2℃下げて28℃、つまり28℃一定を目指します。夜間はヒーターを使ってでも3℃上げてしまい、昼間はファンでなんとか2℃下げるのです。

そうです、わたしは真夏でもヒーターを水槽から取り外すことはしません。ヒーターは水温の最低水準を下回ることが無いように常にセット、水温の下支えをしているのです。

とにかく暑い夏水槽には過酷な季節でもあります。人間も熱中症に気を付けて、水槽ともども快適な夏を過ごしましょう!!コツは「水温変動を最小限に」です。

タイトルとURLをコピーしました